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戦い抜いた6試合。最後の最後に見せた意地~順位決定戦第3戦 対チェコ戦レポート

IIHF女子アイスホッケーU-18世界選手権

ゲームレポート 1/13

7・8位決定戦 第3戦

日本 1 (0-0、0-1、1-2) 3 チェコ

シュート数:日本18 チェコ20

 

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再三、チェコゴールに迫った日本だったが…

 

日本が持ち込んだ狙い通りの展開を1発のシュートが打ち砕いた。
 

大会初日に次ぐ746人の観客がスタンドを埋めたこの試合の第1ピリオドは0-0の両者無得点。

試合の入りで失点しないようにと、日本チームが意思統一して臨んだこの試合。体格に勝る相手に対して、1人が抜かれればもう1人がカバーするという丁寧な守りを心掛けて、時にピンチはあったものの、しっかりと20分間をしのいで第2ピリオドを迎えた。

第2ピリオド、日本は勝負に出る。

走れる選手を氷上にラインアップし、ピリオドの開始から運動量を上げて相手ゴールに攻め込む。

第2ピリオド開始後すぐ、12輪島夢叶が自陣で相手DFに絡み、こぼれたパックを18伊藤麻琴が拾って一気にカウンター。GKと2対1の状況から、輪島がゴール右隅を狙うがこれはチェコGK1PEJSOVA,Julieの好守に阻まれる。

2分30秒すぎには相手ゾーンのブルーライン付近で23佐藤愛梨がバックを奪い返し、すぐに逆襲。16園家唯がシュートしたリバウンドを佐藤がゴールに押し込んだかに見えたが、その前にゴールが定位置より動いていたという判定で得点は認められず。

勢いがだんだんと出てきて、そろそろゴールか、という雰囲気がリンクに漂い始めた。

 

ところが、その次のフェイスオフでチェコがパックを奪い、日本は自陣のゾーンへ攻め込まれる。必死の守りを見せるものの、15MLYNKOVA,Natalieがブルーラインで日本選手を左へ右へと交わして、ゴールの右45度へ。日本はDF2人が壁を作り、GKもシューターに正対して守りを固めたが、MLYNKOVAはその上を行くシュートを放った。

 

DF2人の動きを見極め、その身体すれすれを通すシュート。一瞬、視界を遮られた形となったGK1佐々木玲果の右肩上を高速でパックが通過し、ネットへと突き刺さった。

 チャンスを逃さない決定力と集中力。そして個人技量の高さを見せつけるゴールだった。

 

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大会を通じて15MLYNKOVA(左から3人目)を止められなかった


日本に立ちはだかった背番号15 

MLYNKOVAは、チェコから北米に留学中の選手で、昨夏日本がチェコと対戦したときにはメンバーに入っていなかった。

現在は、カナダのHTI Stars(Hockey Training Institute)に所属しているが、来季よりアメリカ、バーモント州のチームでプレーすることに決まっているとのこと。

北米で修行する彼女のシュート1発で、日本は先行して優位に試合を運ぶというプランを壊されてしまった。

 

攻め続け、粘りに粘るも…

その後、第3ピリオドも日本は粘り強く1点差のまましのいで、反撃のチャンスをうかがう。何度も何度も、相手ゴールに迫りシュートを放つがシュート自体の威力がどうしても弱く、GKの堅守もあって、なかなかゴールを割ることができない。

 

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2点目の失点が重くのしかかった

すると、6分39秒、日本はクリアパックを自陣のゾーン内で拾われ、右フェンス近くから逆サイドへ大きく横に展開される。

そこに待っていた13,JANDUSIKOVA,Klalaが思い切りスラップショットを放つと、パックはゴール左ポスト内側をかすめるように突き刺さり、チェコが2-0となる追加点を決めた。

 

その後時間は容赦なく過ぎ去り、残り2分27秒で日本はタイムアウトを取り、6人攻撃を選択。

しかし、18分42秒。つなぎのパスをチェコにカットされ、そのままエンプティーネットゴールを決められてしまう。

これでチェコが3-0とし、事実上チェコの7位でのトップディビジョン残留と、日本の8位でのディビジョンIAへの降格が決定したといっていい。

 

残り32秒、未来への「1点」 

このゴールで「ここまで」と思った観客も多かっただろう。

しかし、選手達は最後まであきらめていなかった。

 

猛然とゴールに向けてラッシュし、何度もリバウンドを拾ってシュートを試みる。

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最後の最後、14歳の伊藤の前にリバウンドが


そして、日本は相手ゴールに向けて全員が突っ込むような、気迫のあるプレーを見せてパックをたたき続け、最後はゴール左にこぼれたパックを18伊藤が押し込んで、ついに1点を挙げた。試合時間残り32秒のことだった。

 

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そして、タイムアップ。チェコの選手が歓喜に沸く中、うなだれる日本の選手たち。

6試合を戦い抜いた、日本女子U-18代表の戦いがここで終わった。

 

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最後の最後に日本が奪い取った1点が持つ意味。

それは選手1人ひとりで違うのだろう。

しかし、彼女たち22人が家族のように1つになって戦い抜き、最後に1点を奪ったという記憶が、成長への道しるべとなることを信じたい。

彼女たちのホッケー人生はまだまだ未来へと続いている。(Text&Photo:Tomoki Sekiya)

  

飯塚祐司監督の試合後コメント

第2戦と比べて、残念ながら運動量の下げ幅が大きく、勝ちきるまでの内容ではなかった。 第1ピリオドまで、チェコの攻勢に対して内側への侵入を防げていたが、第2ピリオドに入ってからはうまく行かなかった。

決定機は作れるが、それを決めきることができない日本の課題がこの試合でも出てしまった。

今後は、リバウンドへの反応の速さや腕力強化など、改善をしなければならない点を洗い出し、前に進んで行くしかない。

 

 

志賀紅音キャプテンの試合後コメント

試合のスタートは悪くなかったですが、昨日のような勢いが足りなかったと思います。シュート数が少なくなった部分があり、チャンスを決め切れていれば追いつけたのですが、その部分が敗戦につながってしまいました。

おととし降格したときは全敗で、1つ勝利できたのは成長した部分があると感じました。スコアリングもできましたし、足を使ったプレーは通用したとみんな実感していると思うので、ここから北京に繋がっていくと思います。もっとシュート力を磨いて上のチームに通用するような力を身につけたい。

キャプテンとして、自分の事だけでなくチームのことを常に考えてプレーした経験は今後も活きると思います。

 

野村春菜選手の試合後コメント

大会後半になるにつれて選手の気持ちも1つになって、日本のペースに持っていくことができたと思います。DFとしてはシンプルにどんどん前に向かってFWに良いパスを出そうと話し合って、前に前に、と意識してプレーしました。

トップディビジョンは相手にレベルの高い選手が多く緊張や戸惑いなどもありました。でも、チームみんなでコミュニケーションをしっかり取って、自分の長所である判断力を生かして試合に臨めたと思っています。

 

伊藤麻琴選手の試合後コメント

――得点のシーンは?

3失点目は自分のせいだったので本当にそれが悔しくて、1点でも取ろうと臨んだので決めることができて良かったです。失点は自分に責任があると思っています。

残留できなかったのは本当に悔しいですし、今年でこのカテゴリーを卒業する先輩の方を笑顔で終わらせてあげられなかったのが本当に悔しいです。

ーー今後成長するために必要なことは?

外国人選手は大きく身体が強いので、スピードで圧倒しないと抜けられないと感じました。もっとスピードを付けたいです。あと体幹を鍛えたいと思いました。

パックへの1歩目が早く出れば、このレベルでも相手より先にパックを取ることができるという手応えはありました。まだまだ努力しないと外国人には勝てないと思います。

これからもっと練習して、努力して外国人と互角に戦えるようになりたいと思います。

 

チェコZUZIAK,Pavelヘッドコーチの試合後コメント

日本が悪かったのではなく、私たちが昨日の試合よりもいいプレーをしたのがこの結果になった理由。ゴールを奪うために、選手達が取り組んだことが実った。

7位決定戦は、正直精神的にキツい。メダルを狙うことよりも厳しい条件だったが、選手達の良い経験となったと思う。

日本は大会を通じてとても強いチームだと感じている。統率が取れ、スピードのある良いチームだった。