アイスホッケー&アイスクロス情報新Webサイト準備室

【4/28開幕! 世界選手権Div-IBに臨む日本代表を現地密着取材中!】日本とアジアのアイスホッケー、アイスクロスの選手を、男子・女子・パラのオールジャンルで応援していくWebサイト。その準備室です。2019年9月オープン予定

昨季8位からの逆襲へ! 東北フリーブレイズ、韓国でのプレシーズンマッチでの成果は?

f:id:U18WWicehockeyfans:20190831095624j:plain

<Photo&Text:関谷智紀(ホッケーアクロスジャパン)>

新しいシーズンに向けて各チームも最後の追い込みといった感じの8月後半。

東北フリーブレイズは韓国で開催された大会でプレシーズンを締めくくった。

 

East Asia Club Ice Hockey Games

8/24 東北フリーブレイズ 4-2 KRS-ORG北京(中国・VFL)

8/25 東北フリーブレイズ 0-6 アニャンハルラ(韓国)

f:id:U18WWicehockeyfans:20190831095426j:plain

極東4チームがピョンチャン五輪のリンクに集結

 

8/23~25にKIHF(大韓アイスホッケー協会)の主催で開催された「East Asia Club Ice Hockey Games」。会場は2018年のピョンチャン・オリンピックで熱戦が繰り広げられたアイスホッケーのメイン会場、カンヌン(江陵)アイスホッケーセンター。

参加チームは、東北フリーブレイズ(日本)のほか、アニャンハルラ(韓国)、デミョンキラーホエールズ(韓国)のアジアリーグ勢、そこにKRS-ORG北京(中国)というVHLに所属するチームもやってきた。

 

VHLとは、KHL(ロシアを中心にヨーロッパ各国からクラブチームが参戦するリーグ。NHLの次にレベルの高いリーグとされる)の下部リーグ。ORGはKHLクンルン・レッドスターズ(中国)の育成チームとの位置づけのようだが、果たしてどのくらいの実力なのか? フリーブレイズも見られるし、気になる韓国勢もまとめて見られる。さらには謎に包まれた(大げさ?)VHLチームの実力をこの目で見られる、ということで江陵までバックパックを背負って見にいった次第である。

 

東北フリーブレイズの大会初戦は24日、ORGとの対戦。

ORGは大会初日である23日にハルラを4-1の大差で下しており、「結構強いのか?」と想像しつつ楽しみにフェイスオフを待った。

さてその試合、第1ピリオドはお互いに攻め込みながら一進一退の展開。ORGはロシア人選手のスキルが高く、個人技でゴール前に迫るシーンが多かったがラストパスがやや精度を欠きシュートまで持って行けず。対するフリーブレイズも、ニュートラルゾーンでのパスがずれるなどコンビネーションがまだ固まりきっていない印象もあり0-0で終了。

 

しかし第2ピリオドに入ると次第にフリーブレイズが走り勝つシーンが多くなり、ゴール前に攻め込んでいく。

そこで得たパワープレーのチャンスでは、大きく横方向へのパスを二度三度と繋いで相手DFを翻弄。GKもついて行けなくなったところでゴール左サイドからがら空きのゴールへ#28ブレット・パーナムがパックを流し込む見事な形で先制した。

 

f:id:U18WWicehockeyfans:20190831100243j:plain

外国人の補強で、攻撃力は底上げされた感がある

フリーブレイズの2得点目もパワープレーから。昨季は得点力が課題だったフリーブレイズだが、この試合では攻撃の形がしっかりと整っていた。

 

4点目は相手GKがホールドしたパックを離さずディレイ・オブ・ザ・ゲームを取られてのパワープレーで、最初のシフトで教科書通りのようなパスを繋いで最後は#9大宮良がゴール。VHLよりも審判の判定が厳しいことに不満を身体で表していたORGのGKが集中力を欠いていた所をしっかり突いた得点だった。

 

守りの面でも好材料が揃った。GK畑享和が第2ピリオド10分手前まで0-0としっかり無失点に抑え、後半には古川駿へと予定通りの交代。古川も安定した守りを見せて、味方の先制点を呼び込むなど好セーブを連発していた。

f:id:U18WWicehockeyfans:20190831095442j:plain

プレシーズン初勝利に貢献した古川駿

 

第3ピリオド中盤にブレイクアウエイを許し、そこからWANGに決められたが、総じて相手に主導権を渡さない内容。

残り1分半で1-4の状況からORGが6人攻撃に出たさいに、まるでGKを倒してやる、とばかりにぶつかってくるラフなプレーが続くなか古川が顔を押さえて前にパタッと倒れたが、審判は見えていなかったのかプレー続行を指示。その状況で1点をねじ込まれてしまったものの最終的には4-2フリーブレイズが逃げ切り、プレシーズンで初の白星を手にした。

 

この試合でまず目立ったのは鈴木ロイ選手。大きなロシア人選手相手にもひるまず、前へ前へとパックを奪いに行く姿勢を貫いていた。その分ペナルティーを取られることも多かったがその積極性は評価したい。「コーナーでのバトルなどでもう少しやれたかな、とは思います。相手は体格的に大きくフィジカルの強い選手が多かったです」と鈴木ロイ選手自身はまだまだといった表情をみせていたが、彼の頑張りからチャンスに繋がることも何度もあった。シーズンでも期待できそうだ。

f:id:U18WWicehockeyfans:20190831100327j:plain

前へ前へと、積極的な動きを見せたルーキー・鈴木ロイ

 

若林クリスヘッドコーチは、「今季は8人が新加入した事もあり、試合を多めに組んで調整を進めている段階。最後に相手の6人攻撃で点を取られたのは反省点だが、1-4から相手が6人攻撃を仕掛けてきたことはシーズンでそういうシチュエーションとなったときの対応が事前にできたと前向きに捉えたい。今日はチーム全体が粘り強くプレーしていたし、1対1の場面でもしっかりとパックを奪いきるシーンが多かった。ターンオーバーもあったが、そこはシーズンまでにコンビネーションを修正していき対応したい」とオフに積み重ねてきた攻撃のコンビネーションには手応えを感じている様子だった。

 

さて気になるVHLチーム、ORGの実力についてだが、見る限りほぼアジアリーグと同等かやや下かといった印象。アジアリーグチームがVHL上位と戦えばまた違った内容になるかも知れないが、少なくともORGと比べるとアジアリーグチームの方が仕上がっている印象だ。

篠原亨太選手も「知っている中国人選手は2人だけでしたが、過去にチャイナドラゴンなど戦っていた時よりも中国選手の力は上がっている印象を受けます。ただ、個々の上手さはありますがチーム全体としてはサハリンの方がまだ強いような気もします」とORGと戦ってみての印象を語ってくれた。試合については「チーム全体として、パワープレーもショートハンドも良いプレーができたと思います。第3ピリオドは早いフォアチェックから攻撃に繋げることもできましたし、課題だった得点力について結果が出たのは良かった(篠原選手)」

f:id:U18WWicehockeyfans:20190831095720j:plain

ロシア人選手がチームの大半を占めるORG北京

 

GKの古川選手は「とにかく一つ一つのプレーでしっかりシュートを止められるように集中して臨みました。相手はパス回しが滑らかで上手かったですが、僕自身の反省点も見つかるなかでチームのプレシーズン初勝利に貢献出来たことは良かったと思います」と冷静な視点で振り返ってくれた。

なお、6人攻撃で前に倒れたシーンでは、実際に相手のスティックと手がフェイスマスク越しに入っていたとのこと。「顔に入ったので倒れたのですが、審判に『プレー続けて』と言われ続行でした」と古川選手。

ORGは判定にフラストレーションを感じていたのか試合終盤はラフなプレーが目立っており、大けがにならなかったのは幸いだった。

 

f:id:U18WWicehockeyfans:20190831095730j:plain

ORG北京戦では、前からのチェックが良く機能したブレイズ

 

翌25日は、アニャンハルラと対戦。この試合は序盤こそ拮抗した展開に持ち込んだものの、徐々に守りにほころびが出て、最終的には0-6という結果となった。

 

田中豪キャプテンは、今日の内容は? という質問に対して

「今日はもう言い訳なし、ですね」と逆にスッキリしたような表情。

「この2日間でここ(カンヌン)に来た意味をチーム全員が理解して開幕に向かわなければいけない。今日悪かった1対1のバトル、オフェンス、パワープレーなどを開幕までに修正したいと思います。ただ、良い部分もこの2日間で色々見えたので、それをやり続けます。ORG戦ではパワープレーで点が取れたし、60分間集中して良い守りから攻撃に繋げることができた。今日も敗れはしましたが、第1ピリオドには落ち着いてシュートシーンまで数多く持っていくことができた。良い部分をしっかり理解し継続していくのが大事。そこにブレイズの強みというものが出てくると思っています」(田中豪選手)

f:id:U18WWicehockeyfans:20190831095742j:plain

各場面で圧倒されたハルラ戦だったが、今後その差を埋められるか?

昨季は得点力不足に泣いたブレイズだが、この2試合を見るとブレット・パーナム加入が相当の戦力強化に繋がりそうだ。彼が送るゴール前へのラストパスの精度は高く、決定機は相当増えるだろう。

「開幕戦で対戦する王子イーグルスも、今日のハルラと同じようにスピードもあり、プレッシャーもかけてくる相手。今日は仮想王子としてハルラと戦い、叩きのめされて良い刺激になりました。局面でのバトルに勝って、泥臭くプレーすることができれば全然問題無いというか、良いプレーができているという形になると思います。そこをやり続けて開幕シリーズで勝利を掴みたいと思います」(田中豪選手)

王子イーグルスを、ホーム八戸で迎え撃つ準備は着々と進んでいる。

 

f:id:U18WWicehockeyfans:20190831130014j:plain

ゴール前の攻防。田中豪キャプテン(青ユニ)も仕上がり順調だ

「去年は正直、散々な結果でした。でも、ここから『なにくそ!』という気持ちで這い上がるだけ。60分間ハードワークする、身体を張るといった勝ちたい気持ちを前面に出して戦い抜きたいと思います。そういう部分をファンの方に感じてもらえれば。先を見ることはせずに、目の前の戦いに勝つことだけ考えて進んでいきたいと思います」(田中豪選手)

 

アジアリーグアイスホッケーが盛り上がるためにも、東北フリーブレイズの頑張りが必要なことは間違いない。どんなチームに進化していくのか、フリーブレイズの戦いぶりが楽しみだ。