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日本、残留へ視界開けた。「走るホッケー」で目指せ2連勝~順位決定戦第2戦レポート

IIHF女子アイスホッケーU-18世界選手権

ゲームレポート 1/12

7・8位決定戦 第2戦

日本 2 (0-1、1-0、1-0) 1 チェコ

シュート数:日本24 チェコ15

 

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日本勝利の瞬間

歓喜の時がついに

日本が待望の今大会初勝利を手にした。

試合終了のブザーが鳴ると同時に、ベンチから選手が飛び出し、再三の好守を見せたGK1佐々木玲果のもとへ。

そして選手達が声にならない声を上げながら、ゴール前で折り重なっていく。

先制を許しながらも耐えたあと、日本の持ち味が遂に発揮されて逆転を果たしたゲームだった。

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この日は黒にユニフォームを着用したU-18女子日本代表

 

 GK佐々木の踏ん張りで、耐える序盤

試合はチェコペースで始まった。

第1ピリオド3分20秒にはゴール裏からのパスをチェコのがシュート。

パックは左ポストに当たったあと、危うくゴールに吸い込まれそうになったが3野村春菜がスティックを使いギリギリのところで掻き出す。

さらに4分過ぎにはチェコが猛攻。リンク中央でパスを受けた8KALTOUNKOVA,Kristynaが自分でゴールに突進しシュート。これは佐々木(玲)がかろうじてパックを肩に当てて防ぐも、そのリバウンドを拾われる。そしてチェコは25MAZANKOVA,Terezaが強いシュート。そのシュートは佐々木(玲)が右足のパッドに当てて止めるも、流れたリバウンドを7HAASOVA,Hanaが詰めてチェコが先制を果たす。これで日本は5試合続けて先制点を奪われた形となった。

 

 

しかし、この日の試合はここまで4試合とはまったく違う点があった。

日本選手の足が非常によく動いていたのだ。

 

先制されても意気消沈することはなく、逆に日本のスピードと動きの質が上がったような気がしたのだ。反撃ののろしは、6分40秒ごろに飛び出した13鈴木花歩のシュートから。

9分過ぎには11早川愛珠がシュート。GKにセーブされてリバウンドも叩けなかったが段々と得点の匂いがしてくる。10分過ぎには12輪島夢叶が1人で抜け出してGKと1対1になるも、惜しくもゴールにはならず。

ここに来て日本は選手が口を揃えて持ち味だと表現する「スピードと運動量」を生かしたホッケーができるようになってきた。

 

14分過ぎにはスピードへの対応に追われたチェコが立て続けにペナルティーを犯し、日本は5人対3人のパワープレーに。これは得点へとは結びつかなかったが、日本の選手達が今大会でベストとも言える動きをみせており逆転への期待は徐々に膨らんでいった。

 

第2ピリオド、ついに同点に追いつく!

 

その勢いを持って入った第2ピリオド。日本に待望の同点弾が生まれた。

2分3秒、ニュートラルゾーンで23佐藤愛梨がパックを奪うと左ボード際の長岡へ。長岡が間髪入れずゴールに向かう佐藤へパスを返すと、佐藤はくるりと反転しながらゴールへ向けて一気に加速する。そしてGKの直前で左から右へパックをぐいっと真横に動かしてGKを引きつけると、左ポストを狙ってシュート。GKが足を延ばしてかろうじてレガースに当てるも、そのリバウンドを園家がゴールマウスに押し込んだ。

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同点ゴールは完璧なパスワークから生まれた



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同点ゴールに喜ぶ園家(写真左)

ゴールを引き出す過程からシュート、そしてリバウンドに至るまで理想的な形の美しいコンビネーションで試合は1-1とふり出しに戻った。

特に佐藤が見せたパックを大きく真横に動かしてからシュートするプレーは現代ホッケーで得点するには欠かせない技術。ぜひ、プレイヤーの方は映像を見て参考にしてほしい。

 

その後第2ピリオドは一進一退の攻防に。どちらも決定的なチャンスを迎えるなか、両GKの踏ん張りでお互いに得点は奪えず。日本が初めて与えたチェコのパワープレーでは、ポストに当たったシュートのリバウンドをゴール近くで叩かれたが、GK佐々木(玲)が素早い反応でこれをセーブする。両チームに好プレーが生まれるなか1-1の同点のまま試合は第3ピリオドに突入する。

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佐々木(玲)の守備がチームを引き締めた

 

期待の大型フォワード、伊藤麻琴が今大会初ゴール

そして迎えた第3ピリオド。

日本はコンディションが非常に良いせいか、時間が経つにつれて動きの質もさらに上がっていくような印象だった。明らかにチェコとのスピードの差が見て取れるようになり、アタッキングゾーンに攻め込む時間もどんどん増えていく。

 

そして5分12秒。

18伊藤麻琴が左ボードから左コーナーへとパックを運ぶ。彼女にマークが3人付いていったんはパックを奪われるも、ゴール裏での横パスを輪島がカット。輪島は勢いそのままにゴールの右側を巻き込むような動きでGKに迫ると混戦となり、左に流れたパックを伊藤が倒れながらもシュート。力でゴールに押し込むような形で決まった伊藤の今大会初得点は貴重な逆転のゴールとなった。

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逆転ゴールのシーン>輪島(右から2人目)のパスから…

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伊藤(左から2人目)がバックドアの位置に入って…

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倒れ込みながら、伊藤(左から2人目)がゴール



 

最後まで走りきった、日本

あとは、逃げ切るだけだ。

日本は最後まで運動量が落ちず、チェコの選手よりもパックに先に追いついて試合をコントロール。11分過ぎには15鎌田美南が狙うが惜しくもゴールの右へ。

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鎌田(写真左)のシュートは惜しくも左へ

 

一方チェコは残り3分半に8KALTOUNKOVAが最後の疲れを振り絞って高速で日本ゴールに突き進んだが、佐々木(玲)が落ち着いて対応し事なきを得る。

残り2分を切っても日本は攻撃を継続してチェコに6人攻撃に出るチャンスを与えず、残り10秒のカウントダウンへ。試合が終わった瞬間、ベンチから全員が飛び出して佐々木のもとへ駆け寄っていった。

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初勝利に喜ぶ日本の選手たち


 

 

1日で、チームの状態ががらりと変わった

この日の勝因はなんといっても、日本のコンディションの良さに尽きるだろう。0-6で完敗した2日前の試合に比べて明らかにスピードがあり、それが第3ピリオドまで落ちない。

試合が進むにつれて疲弊していくチェコ選手との差は歴然だった。

飯塚監督は試合後、コンディショニングについて「スタミナ面では日本が優位と思っていたが今大会では肉弾戦が続き、そのあたりの消耗が想像以上に激しかった。なので(休養日の)昨日朝に急遽練習をキャンセルして、リラックスするように指示しました」と明かしてくれた。

「そう進言してくれたトレーナーをはじめとするスタッフが良い判断をしてくれました。明日も良い形で戦えるはず(飯塚監督)」。

「最後まで全力で走り抜く」日本らしい戦いを取り戻せたのは、選手の状態を深く観察しているコンディショニングスタッフのおかげだ。休養日1日で選手の状態をがらりと立て直したその取り組みには敬意を表したい。

また、この日は好調なプレーを見せている輪島を伊藤のセットに入れるなど、飯塚監督のライン組み替えが功を奏した。

 

いっぽう、あえて反省点を上げるならば? との質問に飯塚監督は

「立ち上がりでしょう。今日も最初の5分を失点しないように言い聞かせていたが、あと6秒だけ足りなかった。チェコはパックをゴール前に集める技術がとても高いため、チェコの体力が残っている序盤でのゴールを防ぎたい」と答えてくれた。

第3戦でその課題を克服できるならば、きっと日本にとって嬉しい結果が選手達を待っていることだろう。

 

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今大会で初めての『君が代』がリンクに響いた

『仲間』のために、最終戦も全力で戦う

キャプテンの志賀紅音は試合後会見で、

「今までの試合では立て続けに点をとられていたけど、そこを改善できました。みんなの勝ちたいという気持ちが前面に出ていて、声もベンチからよく出ていたと思います。次の試合は、もちろん勝つことが最大の目標です。試合前から気持ちを高めて、今日みたいにスタートして60分間を動かして相手を上回りたいと思います」と話してくれた。

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今日は得点こそ無かったものの好守に活躍した志賀

本来は天真爛漫な性格でとても明るい話し方をする志賀キャプテン。しかし敗戦が続くたびにどんどん表情が暗くなり口数も少なくなるなどで、彼女が受けているプレッシャーはこれほどまでに大きいのかと心配になるほどだった。しかし、この日の勝利でそこから解放されたのは本当に良かった。

「昨日は駅まで散歩して、仲間とカラオケに行って…(笑)。曲ですか? あ、ケツメイシの『仲間』という曲を最後に歌いました」

 

インタビュールームに笑顔がこぼれた。

 

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飯塚祐司監督の試合後コメント

チェコのパワーホッケーに先制は許したが、今日の選手達は集中力を切らすことなく、粘り強く戦ってくれた。気分転換に加えてみんなで戦うぞ、という意味もこめてファーストラインを組み替えた。輪島は懸命にスケートをしてパックを運ぶという、自分の長所を一番前面に出して戦えていたため、思い切ってそのラインにいれた。伊藤もようやく彼女の良さである力強さが出て、粘り強く逆転のゴールを決めてくれたと思う。

 

伊藤麻琴選手の試合後コメント

やっと決めることができました。チームのみんなで取った1点だと思います。

パックが上手く自分の所に流れて来たので、少し浮かすようにして決めることができました。この場面で決めることができて本当に嬉しいです。

今日は第1に声を出すことを意識して、足を止めないようにすることを試合前に話し合ってチームで実行するようにしました。それが相手を上回ることが出来たと思います。

次の試合も60分間ずっとスケートすることを止めないように意識して、全員で声を出して絶対に勝ちたいと思います。

 

園家唯選手の試合後コメント

佐藤選手が相手を上手く交わしてくれて、その時点で私は「あ、入るかも」と思ったのですがリバウンドが出て、そこに上手く詰めることができました。自分は決めるだけでした、佐藤選手のおかげです。彼女とは中学校時代から同じチームでプレーしていて、気も合って、ベンチから出るときにもいつも声を掛け合っていました。

次の試合も今日と変わらない、試合開始からしっかりスケーティングをして相手を圧倒したいと思います。

 

 

輪島夢叶選手の試合後コメント

負けたら降格という試合だったので、試合に入る前にしっかり自分たちで気持ちを切り替え『絶対勝つぞ』という気持ちで臨みました。日本の流れになるようにチャンスを作ってそこで決められればいいな、という思いでした。アシストの場面は、チェコのDFが慌てていてDF同士の横パスがいつもより弱かったので、それをしっかり取ってゴール前で良いところにフリーでいた伊藤選手にパスが出せたと思います。明日も日本のスピードを生かして、チャンスはしっかり決めて勝ちたいと思います。

 

チェコZUZIAK,Pavelヘッドコーチの試合後コメント

日本が素晴らしいプレーをした。スケーティングが良く、チームワークも向上しているように感じた。第1戦とは大きく違っていた。