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一瞬の明暗。1つのバックパスから分かれた勝敗の分岐点~スイス戦レポート

IIHF女子アイスホッケーU-18世界選手権

ゲームレポート 1/9

日本⓪ 1(0-1、1-1、0-0)2 スイス⑥

シュート数:日本29 スイス15  ※丸数字は勝ち点

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志賀のゴールで一度は同点に追いついたが…

攻め続けるも、まさかの落とし穴 

 

第1ピリオドに先制を許した日本。

しかし第2ピリオド4分30秒に得たパワープレー。キャプテンの19志賀紅音みずからがゴール左スミに目の覚めるような強烈なシュートを決めて同点に追いつく。

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選手達は志賀(右から3人目)のもとに集まって歓喜

 

この時間帯、日本は完全にリズムに乗っていた。

ファインゴールの余韻がリンクいっぱいにフワフワと漂っている。

同点にした直後に日本はペナルティーでショートハンドのピンチに陥るも、しっかりとした守りではねのけて、攻めの形ができつつあった。観客席も逆転弾がいつ出るのかを待ち望んでいた。「もう大丈夫だ、いけるぞ」、誰もがそんな雰囲気を感じていたはずだ。

 

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積極的に点を取りに行く、という気持ちはプレーから伝わってきた

9分31秒。スイス選手のペナルティーで日本は4回目となるパワープレーのチャンスを得る。この日、日本はパワープレー中はもちろん、5人対5人の状況でもスイスを圧倒していた。スイス選手がこれだけ多くのペナルティーを余儀なくされたのも、日本がアタッキングゾーンで走り回り、相手を守勢に追いやっている証拠だった。

 

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スイスの気迫のこもった守りで、ゴールは簡単には奪えなかった

「最高のパス」が試合の流れの分岐点に

このパワープレーで日本の素晴らしいコンビネーションが飛び出す。

日本のゴール裏でディフェンスの3野村春菜が相手選手からパックを奪い、2の山下栞へ。山下は高い位置で待ち構えた志賀にロングパス。

そのパスを受けた志賀が一気にスピードを上げて左のボード際を駆け上がり、ブルーラインを突破。その後ろ2mほどには14佐々木愛実も全速でサポートに走っていた。

志賀が相手ディフェンスを引きつける。そして、後ろから駆け上がってきた佐々木へマイナスのパス。佐々木がそのパックを拾った勢いにあわせて2人でゴール前に突っ込めば、願ってもないチャンスが訪れる……。志賀のパスは、そんな攻めの意図がひしひしと感じられるアイデアにあふれたパスだった。

 

しかし、ほんの少しだけタイミングがずれて、パックは佐藤の後方に流れていってしまう。なんとか体勢を崩して佐藤はパックを拾おうとしたが、間に合わず相手がクリア。

そしてその後、スイスは2人の選手のコンビネーションで日本のディフェンスを崩し、シュートへ。右ゴールポストに当たったシュートは、無情にも日本のゴールに吸い込まれてしまう。

 

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ショートハンドでゴールを奪い喜ぶスイスの選手たち

志賀のパスは本当に惚れ惚れするような素晴らしいパスだった。

しかしその1本のパスがスイスの決勝点を呼び込んでしまうのだ。

ほんのわずかなタイミングの違いで攻守が、そして勝敗が一瞬にして切り替わる、それがアイスホッケーという競技なのだ、と改めて思わされた瞬間だった。

 

猛攻、実らず

試合は第3ピリオド。日本は同点を狙って、何度も攻撃を仕掛ける。

11分52秒には3人対5人と2人少ないショートハンドの大ピンチ。

しかし、途中出場のGK1佐々木玲果を中心とした粘り強いディフェンスが功を奏し、スイスに3点目は許さなかった。

その後第3ピリオドでは相手選手3人のマークを切り裂いて18伊藤麻琴がゴール前へと突破していくシーンもあるなど見せ場は非常に多かった。しかし日本のシュートは単発に終わることが多く、GKにしっかり対応されてしまっていたし、シュートリバウンドを叩くチャンスがあっても別の選手がその位置に届く前に相手に体で押さえられてしまうなど、決定力を欠いたことは否めない。

 

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アタッキングゾーンに攻め込む伊藤

第3ピリオド残り1分5秒。日本は同点を狙い、6人攻撃を仕掛ける。

最後のこの攻撃もパスが意図通りにつながりシュートの形まで何度も持っていく。

試合終了13秒前には、ゴール右サイドの伊藤がワンタイマーを狙って思いきって振りかぶったがうまくパックを捉えることができずパックは右へ。残り6秒、クリアのパックを拾った志賀がブルーラインから強いシュートを放つ。しかし味方フォワードがゴール前でそのパックに触って角度を変えることができず、ゴンと大きな音を立ててパックがゴール後ろのボードに当たったとき、勝利への可能性はそこで潰えた。

※ワンタイマー=パスされたパックをトラップせずにそのままシュートやパスをすること。サッカーでのボレーシュートと似たようなイメージ

 

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スイスはこの勝ちで決勝トーナメントをグッとたぐり寄せた

 トップディビジョンに居続けるために必要なことは

試合全体にわたって、日本はスイスに対して常に主導権を握っていた。

「スピードでは負けていなかったし、シュート数も日本の方が多かったですが、少ないシュートを決められてしまった。守りではコーナーのバトルで体格差にやられてしまったので、コーナーで負けない位置取りなどを学んで行ければと思います」(山下栞)

試合時間の60分のほぼ8割は日本が攻め続けていた時間帯だったし、5人が綺麗に形を作って攻め込むことも度々で、狙い通りに相手をスケーティングで上回って試合を優位に運ぶことができていた。しかし、それでも結果は敗戦。攻めても点が取れないという長年の課題をまた突きつけられた格好だ。

 

その点で見るとやはり手を付けるべき事ははっきりしている。

徹底的にシュート力を磨くこと。

相手選手に身体を寄せられた状態でも、勢いのあるシュートを枠に飛ばせるようになること。

そして、選手のそんな力をしっかり育てられる環境を作り出すことだ。

 

ここまで3試合3連敗という結果となってしまったのは残念というほかはないが、

飯塚祐司監督の「ここまでの試合を見て、世界との差は縮まっていることは確か。あとはどうやって勝ちきることができるか」という試合後のコメントにもあったようにフィンランドに1-2、チェコに2-4、スイスに1-2のスコアが示すように世界との差は徐々にではあるが縮まってきているのは確かだ。

昨年夏から繰り返している合宿や海外遠征での成果が出てきていることは間違いない。

 

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3試合とも接戦には持ち込んだ。世界との差を埋めるために必要なものを見つけたい

 

このトップディビジョンで戦い続けることが日本を強くするための大きな助けとなることは明らか。とにかく、結果は結果として受け止めつつ、しっかり気持ちを切り替えて順位決定戦に臨むことが必要だ。

チェコとの順位決定戦では必ず2勝を挙げて、残留を果たしてもらいたい。

「気持ちを切り替えて、皆で身体を張って頑張りたい。身体のケアもしっかりします」(佐々木玲果)

「ミーティングで今日の反省点を皆で出し合ったりするなかで、明日の目標をチームで共有して試合に臨みたいと思います」(山下)

 

選手達の気持ちは前向きなベクトルを示している。

その気持ちがある限り、U-18代表のメンバーはもっと強くなれるはずだ。

 

(Text:Tomoki Sekiya Photo:Nobuaki Maeda&Tomoki Sekiya)

 

 

7・8位順位決定戦(2戦先勝方式)

第1戦 1/10 14:30~ 日本対チェコ

 

飯塚祐司日本代表監督の試合後コメント

序盤は良いペースで入れたが、先制できずに流れが掴めなかった。スイスは、ゴール前を5人で固めてきたので、その外からシュートを打つように指示しその通りに選手は頑張ってくれたが及ばなかった。2年前にトップディビジョンで戦った時よりも差は詰まっているとは思うが、経験値やチームのレベルはまだ世界を追い越すまでには至っていないのかな、と。昨年にヨーロッパのトーナメントに参加して試合慣れもして、試合の入りは悪くないしシュートの本数も増えているのだが、シュート力がまだまだ足りない。展開を変える突破口のあるようなシュートではなく、相手にとってイージーなシュートになってしまう部分は今後改善しなければいけない。

  

スイス HUARD,Steveヘッドコーチの試合後コメント

(インタビュー時点で)まだチェコの結果待ちだが、4年間の強化の成果が出て決勝トーナメントに行ける可能性があるのは非常に嬉しく思う。とにかく我々のGKが頑張って止めてくれたのが大きい。GKのMAURERは14歳で我々が発掘してスイスのディベロップメントプログラムでしっかり育ててきた選手。そういう意味でスイスの取り組みは正しい方向に進んでいると思える。日本はスピードがあり、身体が小さい分より速く見える。しかしその点はあまり考えすぎないように、自分たちのプレーをするようにと話はしていた。

 

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グループB

フィンランド⑨ 2(0-0,1-0,1-1)1 チェコ

 

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激闘となったフィンランドチェコ

スイスの日本戦勝利という結果によって、勝たなければ決勝トーナメント進出が無くなるチェコ。序盤から、フィジカルを生かしたプレーでフィンランドゴールに迫り、フィンランドのペナルティーを誘発。しかしフィンランドもゴール前をしっかり固めて第1ピリオドは両者無得点。すると第2ピリオドの3分52秒にフィンランドが初めてのパワープレーのチャンスを得るとあっさり1つ目のシフトで綺麗なパスワークから先制点を奪う。

負けられないチェコは、粘り強くフォアチェックを仕掛け続け、相手ゴール前にパックを集めて攻め続けると、第3ピリオド17分4秒にそれが実る。

左コーナーで2人がかりで相手DFからパックを奪い、ゴール前で混戦になったところを押し込んでゴール。

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同点ゴールに喜ぶチェコの選手たち


試合残り3分で同点としたチェコは、逆転でのグループ1位を目指して6人攻撃に。成功すれば決勝トーナメントにグループ1位で進出、得点を奪えなければ同3位で決勝Tならずという大勝負をかけたが、相手選手にパックを奪われ万事休す。フィンランドの選手がチェコゴールまでパックを運び、最後は至近距離からシュートを決めて2-1での勝利を奪った。

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フィンランドが苦しみながらもグループ1位を決めた

チェコの健闘が光ったが、要所での守りの堅さ、パスやシュートの精度の高さ、試合の流れを読む能力などフィンランドの強さが見えたゲームだった。

 

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グループA

アメリカ⑨ 2-0 スウェーデン

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カナダ⑥  5-1 ロシア③

※丸数字は勝ち点

 

グループAは前回大会の順位通り順当な結果に。

 

 

決勝トーナメントの組み合わせは

1/10 14:30~準々決勝① スウェーデンフィンランド

1/10 18:30~準々決勝② ロシア対スイス

 

1/12 13:00~準決勝①  アメリカ対(SWE対FINの勝者)

1/12 17:00~準決勝②  カナダ対(RUS対SWIの勝者)

 

1/13 17:00~決勝