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相譲らぬ激戦に。勝負の綾を掴んだのは日か独か?~4/6IIHF女子アイスホッケー世界選手権トップディビジョン 対ドイツ戦レポート

Text&Photo by Tomoki Sekiya

日本 4(0-1,0-0,2-2)3 ドイツ

シュート数:日本41(7-5,22-2,12-11)18 ドイツ

得点経過及びアシスト:

第1ピリオド 10:51 ドイツ1-0 G12 FIEGERT  A8 ZORN 19 SPIELBERGER

第2ピリオド なし

第3ピリオド 6:07 ドイツ2-0 G34 HAIDER  A25 KLUGE 12 FIEGERT

       7:49 日本 1-2 G12 大澤 A18高 13藤本(も)

       8:00 日本 2-2 G21 久保 A14床(秦)

       16:55 ドイツ 2-3 G22 DELABRE A8 ZORN 19SPIELBURGER

→グループB通算:日本1勝1敗 勝点③ ドイツ2勝(うちPS勝1)0敗 勝点⑤

 

■ショートハンドから先制点を許し、攻めあぐねる日本

試合が一気に動き出したのは、第3ピリオドも6分を過ぎて試合終盤に差し掛かったところだった。

 

そこまでも日本は苦しんでいた。

第1ピリオドにドイツがパワープレーで奪った1点が、残り14分というこの状況でも重くのしかかる。圧倒的に日本が攻め込んでいるのだが、シュートの雨をドイツGKの30HARSSにことごとく跳ね返されていた。

HARSSは身長175cmと長身で、バタフライセーブの体勢を取ろうものなら、ゴールの下部1/3がすべて覆われているような錯覚にすら陥るほど。そんな彼女に対して日本はシュートを打ってはいるものの、直線的な動きが多く攻めあぐねていた。

 

さらにドイツ選手の突破に対してそれを止めようとスティックで引っかけたという判定で日本にペナルティが宣告され、この試合3回目となるプレイヤーが1人少ないショートハンドの状況に陥る。ドイツに取っては3度目のパワープレーとなったこの時間帯、日本はゴール前での競り合いでポジションを取られ、シュートのリバウンドを叩かれて0-2とされる。

第3ピリオド6:07の時点で日本は2点のビハインド。

ますます苦しい状況に追い込まれてしまった。

 

■日本のエースが揃い踏み! 0-2から11秒で日本が電光石火の同点劇!!

 

その窮地を救ったのは、そんな状況でも諦めずに前へ前へと進んでいく日本FWの頑張りにあった。

日本のストロングポイントは、第3ピリオドになっても衰えないスケーティングと諦めないその気持ちだが、7分すぎにその頑張りが実を結ぶ。

 

右サイドから13藤本もえこが打ったシュートに対応しようとしたGKの目の前を9関夏菜美が横切ってブラインドにし、GKが抑えきれず大きく弾いたパックを18高涼風がシュート。さらにそのリバウンドを12大澤ちほが叩いて、遂に同点とする。

選手がしっかり走ってゴール前にラッシュすることでHARSSの持っていた扉のカギをこじ開けた瞬間だった。

 

これで俄然勢いに乗る日本は、次のフェイスオフから一気にパックをダンプ。16志賀紅音が相手ゴール裏まで全速で追いかけDFを慌てさせてパックを奪い取ると、ゴール左にいた14床秦留可にパックを流す。

床(秦)はくるりと身体を反転させながら、ワンタッチでゴール前へパックを送ると、そこに詰めていたのは21久保英恵。ゴールハンターの嗅覚はまったく衰えていなかった。

 

久保はめいいっぱい右手を伸ばしながら、という難しい体制ながらも、床(秦)が送ったパックを浮かせてゴール右隅に送り込む。

 

これにはHARSSもまったく反応できず、日本は遂に2-2の同点とする。

ここまで47分間のあいだ決定力に苦しんだ日本だが、たった11秒で追いつくという素晴らしい集中力を見せてくれた。

 

■お互いの持ち味を出し合う展開に

これで試合は振り出しに戻り、残り10分間は死闘となった。

持ち前の運動量で攻撃のリズムを作っていく日本と、体格の良さを生かしイリーガルヒットのペナルティが取られるすれすれのレベルで体をぶつけ、パワーでパックを試合しようとするドイツ。それぞれの持ち味が発揮されて、一進一退の攻防が続く。

 

とはいえ、同点に追いついた日本の方が勢いがある。徐々にドイツ選手の動きが遅くなって、日本がじわじわと攻め込むシーンが多くなり、逆転勝利への期待は膨らんでいった。

 

■賭けに勝ったドイツ

 

しかし、15分すぎにドイツは攻撃を仕掛ける。

ここで攻めなければ後はない、というような気持ちが伝わってくる動きだった。フェンス際で体を当ててきて、日本選手に簡単にパックコントロールをさせることを許さない。このシフトはドイツが体力を振り絞ってでも攻めようと意思統一がされ、およそ1分30秒ほどというかなり長い時間、日本選手は守備の対応で振り回された。

アイスホッケーでは1シフト40~50秒が全力で動ける時間の目安とされる。そこからは、息が上がるなか必死に踏ん張るほかはない。

 

なんとか試合を止めて息をつきたい日本だったが、ドイツの気迫がそれをさせなかった16:55秒。ドイツはDFからのシュートをゴール前でG22 DELABREが合わせて勝ち越しとなる3点目を奪った。

長いシフトによって日本選手は少しずつ運動量が落ち、相手に対するマンマークが緩んでしまった。その隙を見事に突かれたゴールだった。

運動量を上げて、このシフトに勝負を賭けてきたドイツ選手の試合勘の方が、少しだけ日本を上回っていた。それが勝負の綾だった気がしてならない。

 

残された3分間、日本は再度猛攻を仕掛けるも、同点ゴールを奪うまでには至らず。

枠内シュート数は日本41、ドイツ18と日本は相手より2倍以上のシュートを放ったが、得点では1点及ばず実に悔しい敗戦という結果となった。

 

■ドイツは「リベンジ」に燃えていた

ドイツは2017年2月に苫小牧で行われたピョンチャン五輪最終予選において、日本と対戦し勝った方が五輪という状況のなか1-3で敗れ、出場権を逃した。

「その時の悔しさをこの世界選手権で晴らしたい」という気持ちが選手からもスタッフからも満ち満ちていた印象がある。それがなければ同点に追いつかれたあと、あっさりゴールを譲っていただろうし、長い時間攻め続けた決勝点のシフトも途中で息切れして終わっていたかも知れない。

国際アイスホッケー連盟の記事(IIHF.COM)で、ドイツGKのHARSSは「本当に大きな、大きな、大きな勝利。今日は遂に日本を倒す日が来たんだと思って臨みました」(抄訳は関谷による)と正直な心情を吐露している。

ピョンチャン五輪を終えた時よりも、女子ホッケー界は日本の後に続くチームの底上げがなされ、各国の差が縮まっていることを実感させられた試合だった。

 

■攻め続けての敗戦は勉強になったが、次は勝たねばならない相手

女子日本代表の飯塚祐司監督は「ホッケーに優勢勝ちはないですから」と悔しさをにじませながら、「守るべきところで身体を張れなかったり、パックへの執着心の差が最終的に出た」と話してくれた。

「同点に追いついてから押し切れないところがまだ我々の弱さですね。決勝点のシーンも、プレーを切りたかったがそれを『この時間帯ではこのプレーをする』という選択でまだ判断力が足りない部分があった。ホッケーを熟知しているという点で、あのシフトに関しては相手が上回っていました」(飯塚監督)。

 

この試合ではリベンジを許してしまう格好となったが、これからもドイツとのライバル関係は続く。切磋琢磨する相手としては格好のチームだろう。ぜひ次の対戦では日本が内容のみならず、得点でも上回ることを期待したい。

 

◎日本は4/6が終わった時点で勝点3の3位。

残り2試合(チェコスウェーデン)を連勝し勝点⑨に伸ばせばグループ1位通過となる。

 

<追撃のゴールを決めた 大澤キャプテンコメント>

――試合の感想を?

圧倒的に優勢に攻めていた試合でしたが、得点を取り切れないところがまだまだ課題だと思います。ドイツは身体が大きくてリーチがあるのは分かっていましたし、国際大会でボディコンタクトが激しいのはドイツに限らないので、今日だけ『日本に対してフィジカルで押し切ろう』という感じで向かってきたとは感じていません。

――自身のゴールについては?

流れを変えるために必要なところでゴールを奪えたのは良かったと思います。すぐ次のセットで点数も取れたので、自分たちのリズムを作れたとは思います。

――3失点目について?

シフトも長くなってしまいましたし、相手の点を取りに来る気迫に対して細かいバトルのところで勝ちきっていかないと、ああいう勿体ない失点に繋がっていくのかな、と感じました。シフトが長くなった分、ルーズパックへの寄りとかが遅くなってしまったので、時間帯を考えてスマートなプレイをするといった部分を改善しなければ。

しっかり気持ちを切り替えて、選手全員でコンディションも整えて次のチェコ戦に臨みます。残りの予選2試合を勝ちきって、次に繋げたいです。

 

<同点に追いつくゴールを決めた 久保選手コメント>

――同点ゴールのシーンは?

パスが出てくるという予測はしていたので、良い準備が出来ていたことで良い形で打ててゴールに繋がったと思います。良いタイミングで点数を取れましたが、勝ち越し点があればもっと良かったですね。8,9割は私たちが攻めていたのですが、キーパーを脅かすようなシュート、リバウンドを出させるようなシュートをもっと打っていかないと勝ちに繋がらないとは感じました。

――まだ1位通過のチャンスは十分あります。次に向けては?

今日の負けを次の試合に生かすためにはしっかり自分達のホッケーをすること。次の試合では得点をたくさん取って、良い流れで決勝トーナメントに行けるよう頑張りたいと思います。

――大澤選手、久保選手とチームを支える2人がゴールを取った。次に繋がるのでは?

試合では常に、私たちが得点を取ることでチームが流れを作りたいと思っています。ちーやん(大澤選手)も含めて選手1人1人が得点を取りに行く意識を持って、結果を出していきたいと思います。