奮闘もあと一歩およばず~U-18女子日本代表の初戦はフィンランドに敗れる
IIHF女子アイスホッケーU-18世界選手権
ゲームレポート 1/6
日本 1 (1-1、0-1、0-0) 2 フィンランド
狙い通りのロースコアの展開に持ち込んだ日本だったが……
試合を通じてのシュート数は19-19と互角。
しかし、パックコントロールやパスの正確さ、パックを追いかける際の1歩目の出足、1対1のバトルで相手を最後まで抑えきれるか、といったリンク内で行われる数々の細かな要素でわずかの差が積み重なったことが1点差負けという結果となった。
非常に善戦はしたけれども、最後は試合巧者のフィンランドに上手くかわされた、という印象が強い。
審判基準へすぐにアジャストする力も勉強するべき点の1つ
第1ピリオドの立ち上がりから、日本にとっては厳しい展開が続いた。開始17秒でイリーガルヒットのペナルティーをとられ、いきなり1人少ないショートハンドの状態を余儀なくされてしまう。
その最初のピンチはDF陣が入れ替わり立ち替わりうまく相手のマークについて決定的なシュートを打たせずに無失点で切り抜けるが、5分7秒にまたイリーガルヒットを取られてしまう。
その後もショートハンドを守り切った後にまたペナルティーと、日本が攻撃のリズムを作ることができないもどかしい展開が続く。必死で守っているうちに少しづつ相手のパス回しに守りの形が崩され、精神的にも肉体的にも体力を削られ、パックを奪いに行ったプレーでまたペナルティーを取られるという悪循環。
先発GKの1佐々木玲果がファインセーブを連発し、3回6分間のショートハンドはなんとかしのいでいたが、16分40秒に取られた4度目のペナルティーでとうとうディフェンスが崩され、奇麗にパスをゴール前に通され先制を許してしまう。
徐々に試合の流れを掴む能力はこの年代でもヨーロッパのチームは上手い。このあたりは
今後も日本の課題となってくるだろうし、勉強が必要だ。
日本らしさ、が見えた同点弾
しかし、日本はその直後、じつに「日本らしい形」でゴールを奪い返す。
右サイドのボード際を12輪島夢叶がパックをキープしながら縦へ疾走し、ゴール裏へパックをダンプ(=パックを相手ゴール裏に一度放りこんでから、スピードで追いつきパックを自チームのものとする作戦)する。それを処理しようとしたゴール裏の相手パックキャリアに対して10堤萌香と輪島が積極的にフォアチェックに行きからパックを奪う。「堤さんがしっかり相手をボードに押さえてくれたので、ゴール裏を自由に動くことができた」という輪島がこぼれたパックを拾ってゴール裏を右から左へ動き、ポストの至近から巻き込むようなシュートを放つ。それがGKのレガースに当たってリバウンドとなり、ゴ―ル正面の位置に詰めた14佐々木愛実が冷静に右隅に決めてゴール。
第1ピリオドのうちに日本は試合を振り出しに戻すことができた。
これで流れが変わったか、第2ピリオド序盤には相手のペナルティーが続いて2人多いパワープレーのチャンスも得ることができたが、得点を奪うまでには至らず。
そのうちにやはり徐々にフィンランドペースとなり、16分過ぎに疲れからディフェンスの動きが落ちてきたところを崩されて、1-2と再びリードを許してしまった。
その後日本は第2ピリオド終了間際に18伊藤麻琴が個人技で抜け出してシュートを放つが、惜しくもパックは枠の左へ。
第3ピリオド終盤には、最後まであきらめずチャンスを狙っていた19志賀紅音や堤萌香がDFの網を破ってGKと1対1でシュートを放つシーンが続き、会場を大いに沸かせるも同点弾とまでには至らず。
最後はパックを上手にキープしながらのパス回しを見せてきたフィンランドの前に、6人攻撃をかける事も適わずタイムアップ。
大きなチーム力の差は決して感じなかったが、要所要所で鋭いプレーを仕掛けてきたフィンランドの巧さに日本は手玉に取られてしまった、と言わざるを得ない試合だった。
「次に繋がる敗戦」と信じて
ところで、日本戦の試合会場となった帯広の森スケートリンクはこの日、リンク両サイドにある客席が観客で埋まった。観客数は1064人を数え、この大会、ひいては女子日本U-18代表への関心の高さを示したとも言えるだろう。
志賀紅音キャプテンも「正直、会場の半分くらいも埋まれば良い方では、と思っていました」と観客数については驚いたそうで「声援がとても大きくてチームの力になっていました。だからこそここで勝ちたかった」と悔しさを隠すことはできなかった。
ただ、敗れたとは言えど多くの観衆の前で日本の女子がこれだけ世界と戦えることを身をもって示したことは、この先の女子アイスホッケーのための明るい材料となりえるだろう。
日本は健闘及ばず1-2で敗れたが、こういったIIHF主催大会でのリーグ戦は得失点差までもつれる事も多い。U-18女子日本代表はこの試合の最後まで気持ちを切らすことなくしっかり守り抜いたことは確か。最小得失点差で耐えたことがこの後の展開でプラスとなることを信じて、明日1/7のチェコ戦に全力でぶつかって欲しいし、帯広の人たちに勝利を見せて欲しいと願っている。
飯塚祐司日本代表監督の試合後コメント
試合の立ち上がり、選手達は固くなってしまったというよりは(この雰囲気で気持ちが入って)視野が狭くなってしまったような感じ。審判のペナルティーの基準が厳しかったこともあり、第2ピリオドからは修正できたが、その部分で差ができてしまったのかも。フィンランドには強い選手3人が揃うずば抜けた力のラインがあり、早めにプレッシャーをかけ、極力自分たちのDゾーンでプレーする時間を減らそうという戦術だった。守りから攻撃に転じるときにパスの精度が悪かったり、攻撃のプレーで相手に競り負けるといった場面があったりと上手く攻めに繋げられないという部分が見受けられたため、そこは修正しないといけない。
この大会は地元開催の利を生かすべく、昨夏からチームの強化に取り組んできた。決勝トーナメントに進出して5位以上の成績を挙げる、という目標に向けグループリーグの残り2試合もしっかり戦っていきたい。
フィンランドKUISMA,Miraヘッドコーチの試合後コメント
正直言って、日本が支配していたゲームだった。勝利を奪えたことは初戦としては良かったけれども、決定力に我々は問題があると感じている。それはなぜかは分からないが、日本のディフェンスが良かったのもその理由の1つかも知れない。日本はパス回しの巧さとスピードに特徴があるので、それに気を付けて試合には臨んだ。夏に日本と戦って敗れたときよりもチームは進化している。明日のスイス戦もぜひ勝利したいと思う。
(Text&Photo:Tomoki Sekiya)
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グループB
チェコ 0(0-1,0-0,0-0)1 スイス
どちらもGKを中心に堅い守りを誇る伝統国だが、この試合はスイスGK29 MAURER ,Saskiaの独壇場。パックに対しての反応の速さは目を見はるほどで、チェコのシュートを身体を張ったプレーでことごとく止め、息詰まる熱戦をスイスが制する原動力となった。
特に第3ピリオドにペナルティーショットを止めたプレーは冷静に相手の動きを見切っており、圧巻だった。
チェコは大柄でパワーのある選手がFWに多く、アタッキングゾーンに入る時間はスイスよりも遙かに多かったが、最後の最後に決定力を欠いた。
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グループA結果
カナダ 2-1 スウェーデン
アメリカ 3-2 ロシア
(Text&Photo:Tomoki Sekiya)